平岡整体療院院長の放浪記


第34話 「ネクロポリスA」
王家の谷



クルナの泥棒村

ハトシェプスト女王葬祭殿のあるディル・エル・バハリから右手に山の周りを巻くように進んでいくと、山の斜面には『クルナ村』と呼ばれる通称、墓泥棒村の集落が見えて来ます。 この村の反対側には王家の谷があるのですが、王家の墓はこの泥棒村の村人の祖先が全て盗掘してしまったのだと言われています。 


デル・エル・バファリの入り口付近にある
第18王朝のファラオ・アメンホテプ3世の葬祭殿
の塔門の前に建っていたファラオの坐像
現在修復作業中だったが職人は休憩ばかりしていた


王家の谷ではおよそ100年前に発掘ブームが起こりヨーロッパ人が大勢やって来て砂漠を掘り起こし始めました。 


ハワード・カーターの住んでいた家

王家の墓は盗掘を逃れるために入り口を岩や土で隠し、記念碑のようなものを一切置いていなかったので、発掘をしに来た考古学者たちは王家の谷の地面をただひたすら掘って探してみるより他に方法が無かったようです。


早稲田大学発掘隊の本部(ワセダハウス)

墓が見つかるとその都度、KV(キングスバレー)の頭文字に発見した順番に番号を付けて行きました。 現在までに62箇所で墓が見つかっていますが、その殆どはイタリア人のエジプト学者 ジョバンニ・ベルツィオーニと、アメリカ人の証券王 デイビスの二人が発見したものです。


エルクルン山(ピラミッド山) 王家の谷のシンボル的な山

そして62番目のKV62こそイギリス人のハワード・カーターが1922年に発見したツタンカーメン王の王墓です。 この発見は20世紀最大の発見と言われ、当時は大変なニュースになりました。


KV62 ツタンカーメン王墓の入り口
有名な墓なので墓場も山の賑わいでした


カーターは王家の谷で発掘を始めてから10年以上もの間、ツタンカーメンの墓を探していましたが長期間にわたる発掘活動のため、資金が底を尽きかけていました。


発掘当時の記事

そんな矢先に新しい墓の入り口を見つけたのだそうです。 カーターが最後の壁を崩した時、墓の内部から3400年前の空気と匂いが流れ出して来ました。


王墓の内部

カーターの後ろから立って見ていた発掘資金の提供者、カーナボン卿は『カーター君、何が見えるかね?』と尋ねました。 するとカーターは『はい、素晴らしいものが…』と答えたそうです。 その時、カーターが見たものは、それまでの発掘品や壁画にも描かれていない、誰も見たことが無いものばかりでした。 墓の中からは全部で2000点の副葬品が見つかりました。


王墓の中はぎっしりと副葬品で埋め尽くされていた

当時のエジプト人は 『生前に必要だったものは、死後もきっと必要になるだろう』 と考えて墓の中にはあらゆる物を持ち込みました。


黄金の棺を調べる ハワード・カーター

家具、寝具から道具、食料、武器、チェスのような玩具まであったそうです。


椅子に腰掛けるカーナボン卿

その後、まもなくパトロンのカーナボン卿は謎の急死をとげたので 『きっとこれはツタンカーメンの呪いで死んだのだ』とマスコミは大騒ぎになりました。 


ツタンカーメンの玄室の壁に描かれた口開けの儀式の様子

その時の様子を想像してみると、それほどドラマチックな瞬間を体験できたカーナボン卿とカーターは呪われて死んでも本望だったのではないとかと思うのです。


現在の玄室の様子

発掘当時、ツタンカーメン王墓の上には古い石の建物が建っていたので、なかなか見つかりにくかったのではないかと言われています。 ツタンカーメンの墓の構造は4部屋のみで、王家の墓の中では最も小さなものでした。 その中にぎっしり詰め込まれていた副葬品はカイロ博物館へ運ばれ、遺体は発見者カーターのたっての希望で第一人型棺に納められたまま墓に残されました。 


玄室に置かれた第一人型棺
この中にミイラが眠っている


他の王墓を見てまわると、岩を深く掘りぬいて通廊や部屋の中は壁画や聖刻文字で壮麗な装飾が施されています。 きっと当時の第一級の絵師が描いたものに違いありません。

ラムセス2世の父、セティー1世の墓に至っては入り口から玄室までの奥行きが150mもありました。 墓の大きさは王の在位期間に比例するそうですが、王に即位した時から自分の墓造りをすることが当時としては常識だったようです。

ただ残念なことに61箇所の墓は全て盗掘された後で、3400年の間、静かに眠ることができたのはツタンカーメン王だた一人だけだったようです。

ツタンカーメン王は悲劇の少年王だと呼ばれているようですが、死後の運命を見る限りにおいては幸運の王子だったのではないでしょうか?


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