平岡整体療院院長の放浪記


第21話 「ギザのピラミッド@」

丘陵地帯にそびえるピラミッドは、遠くから見るとなおさら大きく高くなって見えます。 


この日、泊まる予定のホテルは、ピラミッド群が立ち並ぶギザ大地の見える場所にありました。 建物の庭には、たくさんのナツメヤシが植えられており、大きなプールとコテージの客室が並ぶリゾート型のホテルです。 

私は自分の泊まるコテージに荷物を降ろしてから、すぐにバスに戻りました。 この後すぐに観光が控えていたのです。 

ピラミッドに向かってバスが走り始めます。 坂に差しかかり登り始めてからわずか5分でピラミッド地区に到着してしまいました。 バスの窓から見えるピラミッドは目を見張るほど巨大なので、窓からだと近すぎて山の頂上までは見えません。 


第一ピミラッドの北側斜面

バスから降りてみると、観光スポットだけにピラミッドの入り口付近には、黒山の人だかりが出来ていました。


一年間にエジプトへ訪れる観光客は約100万人ほど(2004年当時)なのだそうですが、このギザのピラミッドには、同数の100万人が必ず訪れるそうです。 


今、目の前に立っているクフ王の大ピラミッドにおいては、遺跡の保護のために一日300人までの入場制限がされています。 年間だと10万9500人ほどが入場しており、観光客全体から見ると約9人に1人がクフ王のピラミッドの内部に入場していることになります。 


第1ピラミッドの基礎石です。間近で見るとわりといい加減に積まれている様に見えます。

私も早く中に入ってみたいと思い、入場口を眺めていると、現地ガイドが第1ピラミッドの解説を始めていました。 以下はガイドが話していた内容なのですが、それをそっくりそのまま紹介します。 

『ここ、ギザ台地は石灰岩の岩盤で出来た丘陵地帯です。 三基の大きなピラミッドは、すべて岩盤層の上に建造されています。 


今、皆さんの目の前に立っているのが一番大きなクフ王の大ピラミッドです。 石だけで造った地上最大の高層建造物で、約4500年前に建造されました。 


高さは147メートル、底辺は230メートル、傾斜角度は51度50分、で平均約2.5トンの石が230万個も使われており、総重量は約600万トンにもなります。 


この驚異的な建造技術と、ほとんど誤差の無い精度の高い技術は、今だ謎とされ、現代の科学を持ってしても解明できていません。 

この第1ピラミッドは、クフ王から数えて4代前のジェセル王が「階段ピラミッド」を建造してから約100年後に建造された7番目のピラミッドにあたります。 

当時のエジプトは、シナイ半島との交易が盛んに行われていたこともあって大変豊かな時代でした。 そこで、ギザ台地では莫大な財力を背景に、国家の大事業としてかつてないほど大きなピラミッドが立てられました。 完成までには多くの労働者が働き、大変長い歳月がかかりました。 

土木工事の専門家が計算したところでは、石材の切り出しと、運搬、さらに基礎工事までで10年、石材の引き上げと加工、そして組み上げに約20年、合わせると30年くらいはかかっただろうと言われています。 

さらに第二、第三のピラミッドの工事期間も合わせると100年近くかかったのではないかと言われています。 

ジェセル王から4代にわたり約100年もの間、ピラミッド建築は改良と研究が続けられ、高度な技術は進化を遂げて来たのですが、ギザのピラミッドでは理想の形が完成されたと言われています。 

これまで4500年の間に大きな地震が7〜8回もありましたが、ピラミッドはほとんどダメージを受けていません。 壊れて見える所は、9世紀以降のイスラム勢力による破壊によるもので、建物や道路に使う石材として持ち出されたものです。


9世紀にアラブのカリフ・アルマムーンが盗掘のために開けた横穴

このピラミッドは、何の目的のために立てられたのかと言いますと、それは王を埋葬する墓として他の複合施設と合わせて建てられました。 

9世紀にイスラムの指導者によってピラミッドに横穴が開けられ、内部へ通じる通路が発見されましたが、ピラミッドの中からは遺体どころか副葬品も何も見つかっていません。 

この通路は侵入者を想定して造られた仕掛けなのか、儀式用に造られたものなのか、それは今でも分かっていません。

ピラミッド内部には、まだ発見されていない部屋があるので、この石の山のどこかに王の遺体は隠されているのかも知れません。 

この付近の土地、ナイル川の西岸の地域は昔、ネクロポリスと呼ばれた「死者の街」です。 ピラミッドの周りには王に仕えた政治家や、貴族、軍人や神官の墓がたくさんあります。 

ギザのピラミッドは驚異的な巨大建造物なので、謎と神秘にとりつかれた歴史マニアなどが未知の失われた文明と結びつけたがる傾向が強いみたいですが、私はそういう考えにはあまり感心しません。 

ピラミッドは、れっきとした古代エジプト人の大事業です。 これまで失われた文明に結びつく証拠も記録も何も見つかっていないのですから他の文明など探す必要はありません。 エジプトにはそれほど偉大な文明が存在していたのです。』

ガイドさんは、そう誇らしげに解説を終えました。 妙に納得のいく解説に我々ツアーの一行は、口をポカンと開けたまま聞き入っていました。 

ガイドの話も終わったことだし、いよいよ ピラミッドに入場できるものだと思っていました。 ところが『次は第二ピミラッドへ移動しますからバスに乗ってください。 このツアーは第1ピラミッドへ入場する予定はありません。 次の第2ピラミッドへ入場します。』

ガイドからそう言われて、しぶしぶバスへ乗り込んだものの、偉大なピラミッドの話をたっぷり聞かされて感動しているのに、『入場する予定はありません』では、とても納得のできるものではなく、見られないとなると、かえって気になってしょうがなく、同じバスに乗り合わせた人たちも同じ気持ちだった様子で表情は暗くなっていました。


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